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【債務整理】法的整理のやり方(まとめ)

債務整理の基本的な対応法は、任意の対応法と法的な対応法の2つに大別されますが、今回は法的整理による対応法についてご説明します。

 

【法的な対応法】

① 弁護士に依頼して「個人再生」の取組を行う

② 弁護士に依頼して「過払金返還訴訟」を申し立てる

③ 「特定調停」「調停」の申し立てを行う

④ 「自己破産」の申し立てを行う

 

①個人再生

「個人再生」は民事再生法に基づき、裁判所を通して既存債務の最大8割削減と、住宅ローン付きの不動産を遺すことが出来る対応法です。対応は弁護士に依頼します。

この対応法では裁判所を通じた取組ですから、すべての債務を明らかにしなければなりません。従って特定の債務(例えばクレジットカード)だけを残したいと言うことは認められません。

この対応法に取り組む前提として、① 個人であること(法人でないこと)、② 債務の総額が5000万円(住宅ローンを除く)以下であること、③ 給与等の固定的な収入があること、④ 残存する20%の債務を3年以内に完済できる3年後までの安定的収入があること、等の条件があります。

住宅ローンについての債務削減はありませんが、返済期間が最長10年間延長される特例があります。

デメリットとしては官報に氏名が3回掲載されるため、新たな借入が出来なくなること、連帯保証人については債務の削減はなく、債務者本人が支払わなかった分について弁済義務が残ること、があります。

 

②過払金返還訴訟

「過払金返還訴訟」とは従前曖昧だった貸出上限金利が2007年までに現在の利息制限法で確定し、それ以前に支払った過剰利息の返還を求める訴訟を提起することを言います。2007年までに利息制限法の適用が確定したことから、ほとんどの貸金業者は2007年中に利息制限法の範囲内に貸出金利を適合させました。

しかし一部の貸付金については従前の金利で支払を継続させている事例もありますし、2007年を挟んで借入金の返済をしている場合は、利率低減の前の支払利息についてはそのままになっていることもあります。

これら払いすぎた利息の返還を求めるのが「過払金返還訴訟」です。この訴訟を申し立てるについての最大の問題点は、消滅時効により借入金を完済して10年以内でないと申し立てられないと言うことです。申し立て日より10年以上前の過払金については対応できませんのでご注意下さい。

以前はこの申し立てを行うと「事故者」として信用情報に掲載されていましたが、今日ではそれは出来なくなっておりますので、その点の心配はありません。この申し立てについては一部の弁護士事務所が積極的に取組を行っていますので、そちらに相談されるのが良いのではないかと思われます。弁護士費用についても各事務所は事前に明らかにしています。完済した債務については返還額の2割としているところが多いので、いずれにしても手出しすることはありません。返済中のものについては事前に相談して下さい。

この方策については既に事例が多く蓄積されており、かつ弁護士依頼となるので債務者は借入に関する情報を提供する以外に格別の負担が残ることは無いと思われます。

 

③「特定調停」「調停」の申し立て

「調停」「特定調停」の違いとは?

「特定調停」は「調停」の一種で、基本的には調停の特徴を有しています。

「調停」とは民間で発生するトラブルを、裁判所の調停委員会とともに話し合いで解決しようとする仕組みで、金銭問題だけでなく、婚姻関係や相続、交通事故、不動産などのトラブルにも対応しています。基本的な仕組みはトラブルを抱える双方がお互いに歩み寄って納得できる合意点を見つけて解決しようとするもので、話し合いで解決できない場合は裁判に移行することもあります。

 

「特定調停」

この制度では過払いになっている利息を元金に充当し、将来利息を法定利息内に納める交渉を、調停委員会が行うことになっています。元本についての削減はありません。

この制度のメリットは自分で申し立てが出来て専門家に依頼する必要が無いこと(依頼してもかまわない)、申立費用が低廉であること、比較的短期で結論が出ることなどがあります。

なお、既に債務を完済している場合や、返済途中であっても過払利息の再計算によって債務がゼロになり、さらに払いすぎた分の返還を求められるような場合は「過払い返還訴訟」の方が有効です。

この制度のデメリットは過払いになっている利息分だけが対象なので削減額がそれほど大きくないこと、当該借入金の完済後5年後まで信用情報に登録されること、などです。

 

「調停」

「調停」でも金銭問題を扱います。ただし金銭問題での調停では、貸し手と借り手の双方が合意しない限り調停は成立しません。貸し手が法に反した高金利を取っていない限り貸し手は貸し金の減免に応じる必要が無いので、この制度での債務削減は難しいものと思われます。

 

④自己破産の申し立て

自己破産とは?

「破産」とは自分の全財産で全負債を、裁判所を通して弁済する手続きを言いますが、「自己破産」はその申し立てを債権者からではなく、債務者側から申し立てることを言います。

住宅ローンなどの負債を含め、債務者の全収入から最低限必要な生活費を除くと債務の弁済が不可能なほどの多額の負債になっていて、仮に住宅などの資産を売却し、その売却代金を負債の返済に充当しても尚返済不可能なほどの債務が残存しているような場合に申し立てを行います。

この制度のメリットは、「破産」が確定した後「免責」の申し立てを行い、その申し立てが認められると、すべての債務がゼロになることにあります。もちろん「破産」が確定するためには、日常生活に必要な最低限の家財道具を除いて資産性のある不動産や家財道具、貴金属・書画骨董などは売却をしなければなりません。そうした資産は売却されて換金し、負債の返済に充当されます。

なお、住宅ローン付きの不動産には抵当権が設定されていますので、「自己破産」の申し立てと同時に競売に付されることになります。住宅がローン残高以上で売却されればその差額は他の債務の返済財源となります。

この制度のデメリットはほぼすべての財産を失うこと、破産決定から7年間は新たな破産の申し立てが出来ないこと、官報に氏名が掲載され新たな借入が出来なくなることなどです。

 

自己破産の費用はいくらかかる?

自己破産の申し立ての費用は、処分すべき不動産の有無によって大きく異なります。処分する不動産がない場合は2万円程度で済みますが、不動産がある場合は20万円以上が必要になります。申し立て自体は弁護士に依頼しなくても自分でも出来ますが、その場合の費用は50万円以上になることもあります。

破産申し立てに必要な資金が手元にないときは、まず弁護士に破産申し立てを依頼します。こにより借金返済の催促は止まります。催促が止まればそれまでに返済に充当してきた資金に余裕ができますから、その余裕金をためて必要な金額に達したところで裁判所への申し立てを行って貰います。